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2010年03月14日
第三回・逢坂剛カディスの赤い星ギターコンサート
2010年3月12日/東京・草月ホール
「パコ・デ・ルシアを超えるのはこの子かもしれない」
かつてパコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカルとともにフラメンコギター御三家と称されたセラニートは、10代前半のハビエル・コンデの演奏を聴いてこう語った。
しかもそのハビエルは、先輩スターのニーニョ・リカルド、サビカス、セラニート、パコ・デ・ルシア、ヘラルド・ヌニェスなどの作品を好んで演奏するというのだ。
以前このシリーズ(テレビ東京BSでも放映)の主催元であるテレビ東京ミュージックの太田社長と呑んだ折、 その録音をほんの少しだけイヤホンで聴かせてもらったことがある。
それは確かな技術に支えられる、単なるコピーに終わらない堂々たる演奏であり、この日が来るのを、私は心待ちにしていたのだった。
そして結論から云うと、こりゃたいへんな本格派である。
速弾きを得意とすることも噂に聞いていたので、クラシックギターの革命児・山下和仁の若き日のバリバリ超絶技巧みたいな生演奏を予想していたのだが、さにあらず。
スペイン・カサレス出身、21歳の彼は、デビュー当時のクラシックギターの帝王・ジョン・ウィリアムスの無限なポテンシャルと落ち着いた風格とを感じさせるギタリストだったのだ。
ジョンがスペインの大作曲家のアルベニスやグラナドスを軽々と奏でるように、ハビエルはサビカスやリカルドやパコ・デ・ルシアをやはり楽々と奏でる。
初めて経験するそんなシチュエーションを、詰めかけたフラメンコギターのオールドファンたちは大いに面喰らいながらも大拍手で歓迎する。
昨今のフラメンコギターの傾向に疑問を呈するホストの直木賞作家・逢坂剛さんなどもステージ上にて手放しで喜ぶ。
ハビエルに対する私の最大の関心は、彼の「音楽そのものの存在感」だった。
今やパコ・デ・ルシアより速く弾けるギタリストはたくさんいるが、パコのように強烈な存在感でハートを鷲づかみするような弾き手はなかなかに現れない。
だが、この若いハビエルにはすでにその萌芽が充分に感じられる。ただしオリジナル曲の演奏が皆無だったので「フラメンコ力」については感想を保留。
だが彼の生演奏の存在感は、端正なCD録音をはるか超えて、ある絶対水準に達していたのである。セラニートの予言を信じられなかった私がおバカだった。
フラメンコ界からではなく、音楽界からブレイクしてゆく予感あり。次回来日の折には、ハビエル・コンデの内面をがっつりインタビューさせてもらおう!
一方このコンサートのレギュラー、我らが沖仁もセラニートやサビカスの作品演奏で先輩の貫禄を示す。サビカスのこの有名なファルーカの本生名演に、このファルーカこそが青春そのものだったはずの逢坂さんはウルウルしていた。
そして沖仁オリジナルの現代シギリージャは、彼のオリジナル性で堂々勝負する横綱相撲。極上のセンスがきらきら光るその豊かな創造性に、ハビエルは小さくはない感銘を受けたはずである。
途中からカンテの石塚隆充、バイレの伊集院史朗が助っ人に入りさらに沖を盛り上げるのだが、それは何だか妬ましいぐらいに美しい光景だったな。
そしてライブ終盤の絶妙サプライズ、沖とハビエルのブレリア合戦には、まるでボクシングの世界タイトルマッチみたいな格調と、スリリングな緊張と興奮があって、手に汗握る客席は大喜び。
そして前回ギターの出番がなかった逢坂剛は、客席からカンテ大御所・瀧本正信をステージにひっぱり上げ、テクニカはともかくも(汗)、音の存在感だけは玄人ばりのギター伴奏で大いに気を吐いたのでありますた。