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フラメンコなるほどコラム

上達のススメ

第2回 カルメン・アマジャを知っていますか?

カルメン・アマジャ……フラメンコ、特にバイレに興味を持った人は、必ずこの名に行きあたるはずです。
死後40年経ったいまでも、彼女の存在は光を放ち、現在も多くのアーティストに影響を与えています。

彼女を知ること、それはフラメンコそのものを知ることにつながるのです。


数多くの映画に出演し、エンターテインメントの殿堂・カーネギーホールで満場の喝采を浴びた、スーパースター。
スペインを離れ、世界中で華々しい活躍を重ねるなかでも、つねに“フラメンコ”であり続けた偉大な踊り手。

カルメン・アマジャは1913年にバルセロナ近郊で生まれ、当時ヒターノの居住地域であったソモロストロ地区で育ちました。
父はギターを弾き、家族全員が歌い踊る、生粋のヒターノ一家。
幼いころから踊ることに長けていた彼女は、10歳のころにプロの踊り手となって1936年からは一座を率いて各国を巡るツアーを行っていました。

カルメン・アマジャの映像を観て、いちばん驚くのはなにか?
それは、まったく“過去”であることを感じさせないことです。

もちろん映像は古いですし、衣裳やヘアスタイルも一時代前。
なんといっても、第1次世界大戦の前から生きている人です! もうほとんど歴史上の人物。
いろいろなものが古くてあたりまえなんです。
でも、なぜか古さを感じない。

それはたぶん、彼女がいまのバイレ、フラメンコ舞踊のスタイルをつくった人だからだと思います。
アマジャが登場するまでは、女性はほとんどサパテアードをせず、ブエルタもしなかったそうです。
彼女の代名詞である“弾丸サパテアード”や“高速ケブラータ”は、どの作品でも随所に観ることができます。

彼女がいなければ、いまのフラメンコはなかった、そう断言します。

多くの映像作品に出演したアマジャですが、現在手に入るものは多くはありません。
そのなかで、彼女の姿をたっぷりと堪能できる2作品を紹介します。


バルセロナ物語

原作はアルフレド・マニャスの戯曲で、舞台作品としても有名です。
長年仇同士として憎しみ合っている両家の息子と娘が偶然出会い、恋に落ちる。
純愛を貫こうとする2人の、美しく哀しい物語です。
フラメンコ版「ロミオとジュリエット」といわれることもあります。

アマジャは、一方の家の家長、息子への愛にあふれる母親として登場します。
激しいまなざし、厳しい言葉のなかにも息子を思う深い愛情が感じられ、胸を打ちます。
ストーリーの中心は若い2人ですが、主役はアマジャ。
圧倒的な存在感で作品を支配しています。

作品中、サパテアードで彼女の足元がアップになるシーンがあります。
これが、ものすごい。
当時、アマジャは50歳。ギリギリ20代のワタクシですが、絶対に勝てないスピードと重さ。
古い録音でもズシズシとおなかに来ますから、生で聞いたらさぞかしすごい迫力だったでしょう。
音もひとつひとつクリアで美しく、これがサパテアードというものなのね、と思い知らされます。

この作品には、若き日のアントニオ・ガデスも出演。
そのほか、かわいらしいけど、踊りはすさまじい少年・少女など、すばらしい踊り手がたくさん登場します。
いまはもう存在しない、ソモロストロ地区でのヒターノの暮らしぶりを垣間見ることができるのも魅力です。

作品全体がフラメンコですし、アマジャを観るだけでも価値のある作品です。
アマジャは本作の撮影後、50歳の若さで亡くなりました。
しかし、晩年とは思えないほどの輝きを、この作品のなかで放っています。
ブラソ、声、パソ、すべてに宿るコンパスとフラメンコの魂を感じてください。

los_tarantos.jpg DVD バルセロナ物語


ヒターナの女王

アマジャほど女王の名にふさわしい人はいないでしょう。
2枚のCDと1枚のDVDには、奇跡としかいいようのない、アマジャのフラメンコがつまっています。

CDは1941年と55~56年にどちらもニューヨークで録音されたもの。
カンタオーラとしてのアマジャの集大成といえます。
歌声はもちろんですが、恐ろしいグルーヴを持ったパルマや粋なハレオ、
これまた弾丸なカスタネットの音色にも注目です。

DVDには「マリア・デ・ラ・オ」など、映画作品中の彼女バイレシーンや、短編映画の映像が収録されています。
白黒で映像が不鮮明なのが残念ですが、若かりしアマジャのパワーを感じることができます。

los_tarantos.jpg DVD ヒターナの女王


残念ながら、もうアマジャの生きた姿を見ることはできません。
でも、映像をご覧いただけば、アマジャがどんなにフラメンコであったか、
彼女の力強く激しく、そしてエレガントなバイレがどんなに魅力的だったか、
時を経て感じることができるのです。

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