日刊パセオフラメンコ

2017年03月15日 パセオフラメンコライヴ/忘備録

2017年3月9日(木)
パセオフラメンコライヴVol.048 
容昌 フラメンコパーカッションソロライヴ

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(撮影:小倉泉弥)

容昌(パーカッション)
永田健(バイレ)
三枝雄輔(バイレ)

いまやフラメンコライヴに欠かせない存在、
容昌さんのパーカッション・ソロライヴ! 
フラメンコと真剣に遊ぶ容昌さんが奏でる多彩な打楽器が、
耳をシャカシャカくすぐり、
脳髄をストレートに刺激し、
足の裏から押し上げ・・・、
あらゆる響きが全身を刺激してきました! 
メロディも無い、歌も無い、
ただフラメンコのリズムの躍動の中に浮遊し、
トリップしていく快感がたまりません。
直前までシークレットだった共演者は、永田健さんと三枝雄輔さん。
バストン、パルマ、そしてサパテアードとの、鼓動の掛け合いは、
熱くて色っぽくて、ゾクゾクしました。
特別な夜を、またぜひ!

2017年2月23日(木)
パセオフラメンコライヴVol.047 高野美智子 ソロライヴ

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(撮影:小倉泉弥)

高野美智子(バイレ)
原田和彦(ギター)
森薫里(カンテ)
三木重人(ヴァイオリン)

スレンダーな肢体にブレない軸があり、
音楽にしなやかに反応し、流れていく。
自由自在のモダンなフラメンコから
目が離せなかった。

ミステリアスな魅力を持つ人だ。
キラキラしていて、
気風がよくて、
色っぽくて、
肝が据わってる。
何ものにもとらわれない少年、
天真爛漫な女神、
エクスタシーを秘める小悪魔。
掴みどころがないからこそ、
彼女の奥にあるものをどこまでも追い求めたくなる。
その核を充たしているものは、
過去ではなく、未来ではなく、
今この瞬間の喜びを見出し、
そしてその幸福を分かち合おうとする、
とことん優しいホスピタリティ。

2017年2月15日(水)
パセオフラメンコライヴVol.046 三澤勝弘 フラメンコギターソロライヴ

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(撮影:小倉泉弥)

「世界のどこかで今も戦争や飢えで人が死んでいる。
失われるひとりひとりの命のことを考えながらそれを音に込める。
どうやったら伝わるのか・・・」
ある日のライヴの後、想いが溢れ、
吐き出すように語っていた、
三澤勝弘さんのかすれた声が忘れられない。

なぜギターを弾き続けているのか。
アーティストとしての自らの存在意義は何なのか。
その信念が図太く一貫している。

この日のパセオソロライブにおいても、
三澤さんのフラメンコにブレは皆無だった。
パルマも踊りもない、ただ1本のギターで、
誰の言葉も借りず、誰の思想にも頼らず、何も飾らず、
三澤さん自身の想いを語った。
情深くあることがどんなに厳しいことか、
それでもそう在り続ける、
徹底した、人間的な三澤勝弘さんの態度、
そこから生まれる音の残像が後から後から染みてくる。


2017年2月9日(木)
パセオフラメンコライヴVol.045 本田恵美 ソロライヴ

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(撮影:小倉泉弥)

本田恵美(バイレ)
石井奏碧(ギター)
有田圭輔(カンテ)
森川拓哉(ヴァイオリン)
容昌(パーカッション)

「Viajando Arte~アルテの旅」と名づけられたソロライヴは、
アートに生きていく「女の一生」を一夜に凝縮した
濃密なリサイタルだった。
音楽陣は、フラメンコの枠を超えて
それぞれに活躍する場を持つ多才なミュージシャンが集結。
独創性に富んだ音楽が通奏低音に流れる、
一貫したストーリーを持った濃厚なフラメンコ絵巻だった。
気迫が漲る踊りには、浮世絵のような様式美を感じた。
濃厚な色彩を想わせる踊りの流れ。
そのくっきりとした輪郭に迷いは無い。
終演後の会話で、本田恵美さんは、
歌舞伎に造詣が深いことを知った。
彼女のフラメンコに在る、
際立った「洗練とけれん」の理由がそこにあった。

2017年1月26日(木)
パセオフラメンコライヴVol.044 平富恵 ソロライヴ

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(撮影:小倉泉弥)

平富恵(バイレ)
石塚隆充(カンテ)
鈴木尚(ギター)
すがえつのり(パーカッション)

優美でセクシー、そして可憐。
けれど決して甘くない。
パリージョによるシギリージャは、
緊迫感に満ちた、強烈な推進力のある
スリリングなフラメンコを見せてくれた。
学生時代、平さんはオフロードレースに出場、
国際ランキング2位の経歴を持っていると、
初めて聞いた。
『梁塵秘抄』で新境地を開いた平さんは、
常に高いヴィジョンに突き進んでいる。
極限に身を置いた人は、
「美」を追求するときも極限を目指さずにはいられない、
そんな硬派な意思を感じた。

2017年1月18日(水)
パセオフラメンコライヴVol.043 田村陽子ソロライヴ

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(撮影:小倉泉弥)

田村陽子(バイレ)
エル・プラテアオ(カンテ)
エミリオ・マジャ(ギター)
容昌(カホン)

筋肉質でシャープなライン。踊りで鍛え抜かれた身体は美しい。
その高い身体能力で、5つのヌメロを息も切らさずに踊り切った。
生命力のある濃厚な色香が舞台を満たした。
キメのポーズが気持ち良いほどにぴたりと決まる。
そして、その間の動きもくっきりとした描線を持ち、
すべてにおいて迷いが一切なく、
自然体で開かれている。
様々な踊りを学ぶことで培った、バランスの取れた美意識。
曲ごとにそれぞれ違った薫りで咲く、大輪の華の存在感。
そのアートがそのまま彼女の素の在り方と一致しているところが、
彼女の爽快な求心力となっている。


2017年1月12日(木)
パセオフラメンコライヴVol.042 小林伴子ソロライヴ

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(撮影:小倉泉弥)

小林伴子(バイレ/カスタネット)
遠藤あや子(カンテ)
三澤勝弘(ギター)
山﨑まさし(ギター)

小林伴子さんのソロライヴ。
一途にフラメンコを続けてこられた、
矜持ある生き方が顕れていた。
必要な言葉のみを刻むように歌うカスタネット。
すべての虚栄を取り去った踊り。
眉間に刻まれた厳しさ。
迷わない諦念。
エレガントとは、こういう在り方なのだとおもう。

2016年12月22日(水)
パセオフラメンコライヴVol.041 石塚隆充カンテソロライヴ

石塚隆充(カンテ)
智詠(ギター)
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(撮影:小倉泉弥)

力みのない伸びやかな歌声に、気持ちをほぐされる。
石塚隆充さんの歌は、「カンテを聴かねばならない」というような構えを、
さらりと取り払いながら、カンテの核心にストレートに導いてくれる。
普段のライヴでは、その場の雰囲気で自由に歌っていくそうだが、
今回は、70分集中のパセオライヴのために珍しくプログラムを組んだという。
「今の自分を聴いてもらいたい」という想いを込めた11曲は、
石塚さんのMCとともに、まさに一曲ずつ集中して味わいながら
石塚さんの"いま"を感じられる、
そして石塚さんだからこそ歌える、洒脱でブルーで、そしてどこかノスタルジーの滲む、
まさに彼そのものをバランスよく表した選曲だった。
どの曲もほどよく短く、もっと聴きたかったのにと
後を引く感覚がほろ苦くて、いい。
エスペランサ2階のバルコニーから歌ったマルティネーテ、
そしてギター弾き語りのエル・バルコン。
そこは舞台では無く、彼の家の窓枠に思えた、そんな近しさがある。
智詠さんのささやくような間奏に続いて歌った『チキリン・デ・バチン』が耳に残る。
何度も立ち止まっては振り返るような哀しい旋律。
消えていくのを惜しみたくなるような余韻を残す。
「安心していろんな世界に行ける」と石塚さんが信頼を寄せるギターの智詠さんは、
フラメンコはもちろん、フォルクローレ、アルゼンチンタンゴなど
ジャンルを問わずに弾きこなす実力派でありつつ、
その細やかな音色でカンテにどこまでも寄り添い、
歌い手の魅力をさらに引き出していく。
そして石塚さんもまた、寄り添いたくなるような親しみやすい引力を持っているのだった。
ギターデュオによる『インスピラシオン』では音の流れに身を委ねる快さに浸る。
ファリャの『El paño moruno』では、クラシカルな歌をナチュラルなフラメンコで歌い上げた。
歌うことが好きでたまらない、という想いが伝わって来る。
歌うこと、奏でることでつながっていくトキメキを石塚さんは想い出させてくれる。
石塚さんの類を見ないしなやかさは、他者とそうありたいと願うゆえに、
カンテにおける挑戦を自らに課して、一歩ずつクリアして来たからこそ、
朗らかにそなわっているものだと感じる。
「今度は『ポル・ウナ・カベサ』(アルゼンチンタンゴ「首の差で」)もやってみたい。
あ、智詠君のギターはすでに完璧なので、あとは僕が練習しなきゃ」
と語る笑顔は、本当に嬉しそうだった。
協演から生まれて来るものが楽しみで仕方がない、
そんな屈託のない表情に、私の鼓動は軽やかに高鳴った。

プログラム
1, Martinete
2, El balcón
3, El día que me quieras
4, Chiquilín de Bachín
5, El choclo
6, Romance de la luna
7, Inspiración
8, Bulerías
9, El paño moruno
10, El Café de Chinitas
11, Te Camelo


2016年12月14日(水)
パセオフラメンコライヴVol.040 石井智子ソロライヴ

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(撮影:小倉泉弥)

石井智子さんの踊りは、コンサバティブな矜持を保ちつつも、
内面は常に自らを革新させ、
成長していこうとする推進力に満ちた意志を
感じさせる。
その積み重ねが彼女の厚みとなり、
芯のある、そして朗らかな大人の色気を漂わせる
スケールの大きなフラメンコとなっていた。
凛としたパリージョが響き渡る風格のあるシギリージャ。
ふたりのスペイン人カンタオールと堂々と渡り合い、
おおらかな広がりを感じさせたカンティーニャス。
そして、舞台上で起こることをすべて一身に引き受け、
なおかつ大輪の華として舞台を牽引していくたくましさを見せたソレア。
石井智子さんの深い底力を見た。そしてそれはどこまでもエレガントだった。
そして、ご子息の蒼生くんのまっすぐなフラメンコ。
エスペランサの生の空間だからこそ自然に伝わって来た、
彼の素直さ、勢い、そして覚悟。
彼がこの先どんな道を歩むとしても、
それはまっすぐに開けていくことを予感させる、
清々しさがあった。
快い空気に満たされた忘れ難いエスペランサの夜。

12月14日(水)高円寺エスペランサ
石井智子(バイレ)
岩崎蒼生(バイレ)
マヌエル・デ・ラ・マレーナ(カンテ)
エル・プラテアオ(カンテ)
エミリオ・マジャ(ギター)


2016年12月8日(木)
パセオフラメンコライヴVol.039 フラメンコロイド ライヴ

フラメンコロイド
松村哲司(ギター)
あべまこと(カンテ/パルマ/パーカッション)
高橋愛夜(カンテ/パルマ)

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(撮影:小倉泉弥)

熱くて超楽しいフラメンコライヴ! 
まるで鼻歌のような軽やかさで放たれる松村哲志さんのギターは
ズシンと重いプーロ・フラメンコの筋が通っている。
そしてあべまことさんと高橋愛夜さんの
引き締まったパルマとパワフルでシックなカンテ。
年間100本、全都道府県を網羅した上、海外でも活動し、
先日韓国から帰国したばかりという
エネルギッシュなライヴ経験に裏打ちされたフラメンコロイドの
3人の息の合ったチームワークは爽快な三位一体を生み出す。
彼らの求心力に満ちたMCによる観客との対話で、
高円寺エスペランサはまさに一体となって愉快に盛り上がる。
終演後の、あべまことさんの言葉が忘れられない。
「感想とか印象とか、誰にどんな言葉で捉えられていたとしても、
そんなことじゃない。
僕たちのやっていることは、積み上げの効かないもの。
地方や海外でまったく見知らない人たちが、
僕たちのライヴに来てくれたり、足を止めてくれたりする。
その時の彼らの表情、その表情をもっといいものにすることがすべてなんです」
その瞬間に生まれるものを掴んでいく本物のフラメンコ。
自己満足なんぞには絶対陥ることのない、
生きているフラメンコを放ち続けるフラメンコロイドに
これからも何度も浸りたい!


2016年11月24日(木)
パセオフラメンコライヴVol.038 エル・プラテアオ カンテソロライヴ

エル・プラテアオ(カンテ)
フェルミン・ケロル(ギター)
ベニート・ガルシア(バイレ)
鈴木敬子(バイレ)
三枝雄輔(パルマ/バイレ)

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(撮影:小倉泉弥)

セビージャの粋に浸った夜・・・・・・!

ごつごつした肌触りを持つプラテアオの歌声。
生粋のセビージャの誇り高さを感じさせる、
あえて滑らかに洗練させない真摯な歌心は、
力強く素朴に、胸を打つ。
そしてそれはどこまでも気さくで親しみやすい深い懐を持つ。

鈴木敬子さんのソレア。
矜持ある張り詰めた激しさが、
舞台の次元を鮮やかに転換させ、
観る者は、生き方を問われたかのように背筋を伸ばす。
ベニート・ガルシアのタラント。

厳しさを秘めつつ、ウイットに富んだ"陽"の気を放つ。
舞台は希望の光に包まれる。
プラテアオとベニート・ガルシアの絡みには、
共生の凄味が滲む。
パルマにうながされ、一振り踊りながら
ブレリアを歌うプラテアオの笑顔が印象深い。
良い年輪の重ね方をした者たちにしか出せない幸福感が溢れる。
セビージャの粋に満ちた大人の舞台だった。


2016年11月16日(水)
パセオフラメンコライヴVol.037 徳永兄弟フラメンコギターデュオライヴ

徳永健太郎(ギター)
徳永康次郎(ギター)

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(撮影:小倉泉弥)

彼らの音楽は、爽やかさの中に風格がありました。
バッハ『シャコンヌ』のアレンジは、
格調高い、素晴らしい音楽となっていました。
「この完成された音楽」と彼らは表現していましたが、
深い敬意を持って正面から取り組み、
この名曲を分解するのではなく、バッハの真髄を探り当て削り出すような、
バッハの核心にフラメンコで迫っていく演奏でした。
「フラメンコのコード進行に似ている」と康次郎さんは言います。
スペインの古い舞曲を起源に持つシャコンヌと
フラメンコの深いところでのつながりを嗅ぎ分ける音楽性。
彼らの透明な感性がさらに研ぎ澄まされていく先を
これからもずっと見ていきたい。
彼らのシャコンヌが、再演されながら
いかに洗練されていくか。楽しみです。


2016年11月10日(木)
パセオフラメンコライヴVol.036 荻野リサ ソロライヴ

荻野リサ(バイレ)
逸見豪(ギター)
マヌエル・デ・ラ・マレーナ(カンテ)
三枝雄輔(パルマ) 

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(撮影:小倉泉弥)

「誇り高い魂」

美貌に、深い陰影が刻まれていた。
昨年のパセオライヴでは
まだ美しい少女の面影を残していた荻野リサさんは、
内なるマグマを煮えたぎらせ続け、
その手に負えないほどのエネルギーは、
彼女を短期間で老成させ、
いま、彼女は、その苦悩の重みを
全身に宿していた。

自分に正直であろうとする想い、
自分自身でコントロールできないほどの重量を持ち、
まわりを巻き込んでしまうほどの、
その意思の正体は、
彼女の誇り高さだった。

自らが発したパワーで
巻き込んでしまった人々の愛情を、
荻野リサさんは痛いほど解かっていて、
それを彼女自身の愛をもって真剣に返そうとするゆえに、
彼女のアートの懐は、どこまでも深くなっていく。

荻野リサさんに宿る
ホセ・ミゲルの血を引く濃厚なフラメンコの魂は、
若いうちは本人でさえ、振り回されてしまうほど、
偉大なものなのだろう。

年を重ね、経験の層を厚くしてはじめて、制御でき得る、
誇り高い魂を、彼女は内側に抱えている。
その大いなるスケールの片鱗を鮮やかに示した、
高潔な舞台であった。 


2016年10月27日(木)
パセオフラメンコライヴVol.035 川島桂子 カンテソロライヴ

川島桂子(カンテ)
エミリオ・マジャ(ギター)
有田圭輔(パルマ)
三枝雄輔(パルマ)
容昌(パーカッション)

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(撮影:小倉泉弥)

「極上の憂い、情念の華」

のっけから「もう終わってもいい(笑)」というくらい素晴らしいノリの良さで
観客の心を掴み切ったカンティーニャに続き、
川島さんは、艶と憂いに満ちた声で、情感溢れる素晴らしいカンシオンを歌ってくれた。
独特の粘りとノリで思わず腰を動かして踊りたくなる
コケティッシュなタンギージョ・デ・カイも忘れ難い。
バルコニーから天の歌声を降らせたサエタを経て、
後半は、ティエント・イ・タンゴ、ソレア、シギリージャ、と、
カンテ・ホンドの世界を、自らの気迫の限界に挑むように、
惜しみなく、重くじっくりと聴かせてくれた。
川島さん自身が最高に楽しんでいるような自由自在さを感じさせつつ、
練りに練ったプログラム。
共演者も観客も、彼女の発する音楽の大きなうねりに巻き込まれていく快感に
ただ浸り、味わうだけで良かった。
ラストのブレリアの前に語った、川島さんの一言が印象に残っている。
今日は師や先輩方への感謝の想いを捧げ歌ってきました。
最後は私のブレリアを歌います。
それは川島さんにしか為し得ない、エモーショナルな「歌い上げる」ブレリアだった。

アグヘータのもとで暮らし、
彼らの薫陶を直に受けてフラメンコを学んで来た川島さんは、
誰よりもフラメンコを求める心を強く持った人だ。
天は川島さんに、フラメンコの黒い魔力に魅入られる感性と、
その一方で、艶と湿り気のある独特の美声を川島さんに与えた。
乾いた叫びのようなカンテへの渇望と、
ウエットな深みのある歌唱力を持つことを自覚する川島さんは、
ピタリとは重なり切らない方向性の中で逡巡し続けている。
そしてそれこそが川島さんの魅力を際立たせていくのだ。

齢を重ね、経験を積んでいくことで、
人間の苦悩を内在するフラメンコへの追求はより深まっていくだろう。
そして歌い続けていくことで川島さんの艶のある歌声は
よりいっそう磨かれていくだろう。
ふたつを極めていけばいくほど、アルティスタとしての迷いも深まり、
それが極上の憂いとなって、川島さんならではの情念の華となっていく。

「後ろで伴唱しているときは、踊り手をすべて包み込んで、ガッと支えたい。
そんな想いで歌っているの」
そう語ってくれた川島さんは、逃れることのできない深い迷いを持ち、
その哀しみを知っているからこそ、誰よりも強い優しさと包容力を持ち得る。
それが彼女自身のフラメンコになっていく。(井口由美子)