日刊パセオフラメンコ

2019年03月15日 公演忘備録(渡部純子企画Esencia de Barcelona)

★月刊パセオフラメンコ2019年4月号(3/20発売)より
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渡部純子企画Esencia de Barcelona(バルセロナのエッセンス)
(取材/井口 由美子)

2018年11月26日(月)/東京(浅草橋)スペインバル ラ・バリーカ
(バイレ)渡部純子/イニャキ・マルケス(カンテ)勝羽ユキ(ギター)エンリケ坂井

隙はない。遊びと余裕はたっぷりとある、大人のライヴに酔った。
「私のツボなの(笑)。彼が18歳のころからいっしょに踊ってた」と純子さんがいうイニャキ・マルケス。バルセロナで活躍する彼を純子さんが久々に招聘した。色気、少年っぽさ、男っぽさ。中性性、けれん味たっぷりのサービス精神、しなやかで小柄な身体の中に底知れない魅力の詰まったミステリアスなダンサーだ。
 そして純子さんが今回頼み込んでお願いしたという、師匠エンリケ坂井さんのギターの素晴らしいこと!タブラオでは十数年ぶりだったというマエストロ・エンリケの踊り伴奏、ウィットと気迫、煽って追い込んで、こんな側面があったのか!という自在な展開で仕掛け、歌い手と踊り手をのせまくるギターに痺れた。踊り手の呼吸を読みつくし、上昇気流で踊らせるギターだ。勝羽ユキさんのエモーショナルな歌も熱い。純子さんが舞台から飛び出てしまう瞬間があった。いつにも増して限界を超えるクールな熱狂。フラメンコの遊びを知り尽くす実力派たちが互いに刺激し合いながらどんどん昂揚していく。会場にいらしていたやはり師匠である佐藤佑子さんのラストでの一振り、ハグ、信頼の再会に泣きそうになった。
「(まず踊らせる)ギターがあってその上に歌がある。そんなギターが少なくなったから、本当に良い踊り手が育たなくなってしまう・・・」
 ただリズムやテクニックだけで弾いてしまう自分本位のギターではいい舞台は創れない。本場でもそんな兆候があるという。終演後のエンリケさんの話が胸に刻まれる。
 スペイン人の夫君を亡くしたばかりで、彼の地から帰国してわずか数日後のライヴだった。純子さんの踊りに、時間と空間の広がりを感じたのはそのせいだったのか。彼女の芽はまっすぐに前を向く。渡部純子は新たなステージに立っていた。