カルロス・サウラ監督『フラメンコ・フラメンコ』
名匠カルロス・サウラ監督×光の魔術師ヴィットリオ・ストラーロ


「サウラ監督、充実の一作」


 カルロス・サウラ監督の最新作『フラメンコ・フラメンコ』である。あの名作『フラメンコ』で得た歓びが否応無しに湧き上がってくる。もう一度あの衝撃を味わうことができるのか......! 新作の冒頭を見て、この映画が大正解を叩き出していることが早くも予見された。滑らかなカメラワークで画面に映されるものは、高い天井。硬質なパイプで格子状に組まれた頑丈で現代的な建物は、いみじくもこれから登場するフラメンコ達の屈強な精神やアート、そして移り行く時代を象徴するように思われた。なにより『フラメンコ』の一場面が想起された。
 見上げる視線が徐々に下がってくると、同じ方向を向いて配置された絵画が眼下に現われる。一見すると無作為に並ぶ絵画群は、不思議と生命を得た生き物のように見えた。これも監督の遊び心だろう。その最奥にある一番大きな矩形の前で、アーティストはフラメンコを演奏し始めた。
 アーティストの意向か監督のアイデアかまでは不明だが、驚かざるを得ない趣向も散りばめられていた。どんな状況下で演じてもらうか。どうやってそのアーティストを最高に良い状態で映像に収めるのか。そんな創造的挑戦と意気込みが熱い。ロシオ・モリーナが噂に聞いたくわえ煙草の踊りを披露する一方、マノロ・サンルーカルは腰を落ち着けて優しくも筋の通った音楽を奏でる。個人的にはサンルーカルの動く姿を観ることができて大変感激した。
 サラ・バラス、イスラエル・ガルバン、エバ・ジェルバブエナ、ファルキートといった、日西問わず高い人気を誇る抜群の踊り手達。ホセ・メルセー、ミゲル・ポベーダ、エストレージャ・モレンテ等のもはや押しも押されもしない歌い手達。彼らを見守るかのようなパコ・デ・ルシアやサンルーカルの存在。大切な文化が、生活が、美学が世代間で連綿と紡がれてゆく。表現のニュアンスを変えつつも、フラメンコの流儀が確かに受け継がれている事実が捉えられた。
 この正統性。この安心感。その上で、新しくあろうとするアーティストの気迫。いずれの面々も誇らしさが漂っているのは、気のせいではあるまい。まさにフラメンコの現代を掴み取った映像作品である。2012年正月第2弾、Bunkamuraル・シネマ他にて公開。来年は年明けから胸のすく思いができそうだ。

(パセオフラメンコ編集部 小倉泉弥)
















監督・脚本:カルロス・サウラ(『フラメンコ』『イベリア 魂のフラメンコ』『サロメ』『カルメン』)
撮影監督:ヴィットリオ・ストラーロ(『ラストエンペラー』『地獄の黙示録』他でアカデミー賞撮影賞受賞)
音楽:イシドロ・ムニョス
出演:サラ・バラス、パコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカル、ホセ・メルセー、ミゲル・ポベダ、エストレージャ・モレンテ、イスラエル・ガルバン、エバ・ジェルバブエナ、ファルキート、ニーニャ・パストーリ ほか
配給:ショウゲート 宣伝:ザジフィルムズ www.flamenco-flamenco.com
(2010年/スペイン映画/カラー/1:1.85/ドルビー・デジタル5.1ch/101分)